忘れることのできない、伝えておきたい避難所でのエピソード
全身打撲やショックが残っており、私が体育館で横になっていた時のことです。
隣には視覚障害のご夫婦と小学生の姉弟が身を寄せていました。
ある日、姉弟の目の前で父親がバッタリと倒れ、
そのまま運ばれて行ってしまいました。
まだ幼い子どもたちの姿と父親の容態を慮っていた翌日、
父親の兄弟だという男性と子どもたちが戻ってきました。
父親は亡くなられたとのことでした。
荷物をまとめて避難所を立ち去ろうとしたその時、
姉弟は手にしていた牛乳パックを
「残っている人に置いていってあげよう」
「早く飲むようにと書いておこう」などと相談をはじめたのです。
大震災に見舞われ、衝撃的に父親を亡くし、
悲しみがはち切れんばかりであるはずなのに、
なんて思いやりのある姉弟だろう
かと私はいたく感動していました。
しばらくして、学校の先生らしき女性が姿をあらわすと、
これまで気丈に振る舞っていた子どもたちが
その女性の胸に顔を埋めてワーッと泣き出したのです。
私はさっきまでの感動に大きな悲しみが重なって、
言葉にはできない思いにかられました。この光景は、
決して忘れることができず、
いまでもこの姉弟の将来に幸あれと祈り続けています。
(出典)人と防災未来センターホームページ「震災を語る(第5回)」から抜粋
※URLは、http://www.dri.ne.jp/shiryo/katari.html
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